ABL(売掛債権・動産担保融資)を借りる前に確認すること|ファクタリングとの法的な違いを条文と金融庁の注意喚起で確かめる

借りる前チェック|ABL(売掛債権・動産担保融資)を借りる前に確認すること

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不動産の担保がない、代表者の個人保証をこれ以上増やしたくない——そうした事情から、売掛債権や在庫を担保に借りる方法が検討されることがあります。経済産業省が普及促進の対象としているABL(Asset Based Lending=動産・債権担保融資)です。

ABLで最初に押さえるべきなのは、これが「借りる」取引だという点です。売掛債権を売り渡すファクタリングとは、適用される法律も、返済義務の有無も異なります。この記事では、その違いを条文と公的な注意喚起で確認し、契約前に自分で確かめられる項目を並べます。個別の業者の審査に関する情報は公的データに存在しないため扱いません。

1. 経済産業省はABLをどう説明しているか

経済産業省の産業金融政策のページは、ABLについて次のように記載しています(原文・2026年9月2日確認)。

担保として提供できる不動産がないなどの理由から資金調達手段に悩みを抱える企業が、動産や売掛債権を担保として活用することで機動的かつ円滑に資金調達を行うことができる仕組み(ABL<Asset Based Lending 動産・債権担保融資>)の普及促進に取り組んでいます

同省が平成20年5月に公表した「ABLガイドライン」は、ABLを「企業が有する在庫や売掛債権、機械設備等の事業収益資産を活用した金融手法」と定義し、「不動産担保や個人保証に過度に依存しない新たな金融手法として、その普及を促すことが重要である」としています(同ガイドライン第1章・2026年9月2日確認)。

つまりABLは融資(金銭の貸付け)であり、担保として動産や債権を差し入れる形式です。返済義務は借り手に残ります。

経済産業省「産業金融政策」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/index.html/同「ABLガイドライン」(平成20年5月公表・PDF) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/abl_guideline_1.pdf(いずれも2026年9月2日確認)

2. ファクタリングとの違いは「売買か、貸付けか」

金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で、ファクタリングを次のように説明しています(原文・2026年9月2日確認)。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

債権の売買は、民法の債権譲渡の規定によって行われます。民法第466条第1項は「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない」と定めています(e-Gov法令検索・2026年9月2日確認)。

一方、貸付けは貸金業法の適用対象です。貸金業法第2条第1項は「貸金業」を次のように定義しています(原文)。

この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。

項目ABL(動産・債権担保融資)ファクタリング
法的な性質金銭の貸付け(担保として動産・債権を差し入れる)債権の売買(債権譲渡)=金融庁の説明
返済義務あり(借入金の返済)売買として成立する限り、売主に返済義務を負わせるものではない
上限金利の規制利息制限法・出資法が適用される売買であれば利息の規制は直接には及ばない(下記の注意点あり)
貸し手の登録貸金業者であれば貸金業法第3条の登録が必要債権の売買であれば貸金業の登録は要しない
金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」・貸金業法第2条第1項・民法第466条をもとに整理(2026年9月2日確認)。個別の契約がどちらに当たるかは契約内容と実態によります。

金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」 https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html/e-Gov法令検索「貸金業法」第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032/同「民法」第466条・第467条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(いずれも2026年9月2日確認)

3. 「ファクタリング」の名前でも貸金業に当たる場合がある

金融庁の同じ注意喚起は、名称や契約書の文言だけでは判断されないことを明記しています(原文・2026年9月2日確認)。

  • 「ファクタリングとして行われ、契約書に『債権譲渡契約(売買契約)』であることが定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。」
  • 該当のおそれがある例として、譲渡した債権の回収が売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に「売主が債権を買い戻すこととされている」「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」といったものが挙げられています。
  • 「ファクタリングが貸金業に該当するかについては、契約書にノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと)の規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるものですので、注意が必要です。」

同ページは、貸金業に該当しないと判断された裁判例(東京地裁令和2年9月18日判決、東京高裁令和4年6月15日判決)と、貸金業に該当するなどの判断がされた裁判例(大阪地裁平成29年3月3日判決、東京高裁令和3年7月1日判決、名古屋地裁令和3年7月16日判決、札幌高裁令和4年7月7日判決、東京地裁令和4年3月4日判決)を、それぞれ考慮された事情とともに掲載しています。

また同ページは、貸金業を行うには財務局または都道府県の登録が必要であること(無登録営業は刑事罰の対象)、利息制限法および出資法の上限金利を守る必要があること、年109.5%を超える利息の契約をした場合は消費貸借契約自体が無効であることを併記しています(→上限金利の整理は借入金利の法律上の上限まとめ、無登録業者の見分け方は無登録業者(ヤミ金)の見分け方)。

4. 担保にした債権・動産は「登記」で公示される

ABLで売掛債権や在庫を担保に出すと、その事実は登記という形で記録されることがあります。根拠は「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(平成10年法律第104号)です。

同法第1条は「この法律は、法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関し民法の特例等を定めるものとする」と定めています。つまりこの登記制度を使えるのは法人です。主な条文は次のとおりです(原文・2026年9月2日確認)。

条文定めていること
第3条第1項法人が動産を譲渡し、動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、その動産について民法第178条の引渡しがあったものとみなす
第4条第1項法人が金銭債権を譲渡し、債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、その債権の債務者以外の第三者については、民法第467条の確定日付のある証書による通知があったものとみなす(登記の日付が確定日付になる)
第4条第2項債務者本人に対しては、譲渡人または譲受人が登記事項証明書を交付して通知するか、債務者が承諾したときに対抗できる
第7条第3項動産譲渡登記の存続期間は10年を超えることができない(特別の事由がある場合を除く)
第14条債権を目的とする質権の設定についても、第4条等が準用される(質権設定登記)
動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(e-Gov法令検索・2026年9月2日確認)。

民法第467条第2項は、債権譲渡の通知・承諾を「確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない」と定めています。特例法の登記は、この確定日付ある通知の代わりになるという仕組みです。登記だけでは債務者(=あなたの売掛先)には対抗できない点も条文どおりです。

e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000104(2026年9月2日確認)

5. その登記は「誰でも見られる」——だから借りる前に確認できる

特例法は、証明書の交付請求について次のように定めています(原文・2026年9月2日確認)。

  • 第11条第1項=「何人も、指定法務局等の登記官に対し、動産譲渡登記ファイル又は債権譲渡登記ファイルに記録されている登記事項の概要を証明した書面(登記事項概要証明書)の交付を請求することができる」
  • 第11条第2項登記事項証明書(個々の債権の内容まで記載されたもの)は、譲渡人・譲受人・債務者・差押債権者など、条文と政令で定められた者に限って請求できる
  • 第13条第1項=「何人も、本店等所在地法務局等の登記官に対し、登記事項概要ファイルに記録されている事項を証明した書面(概要記録事項証明書)の交付を請求することができる」

法務省の「(債権譲渡登記等)証明書交付請求の手続」も、証明書を3種類に分け、登記事項概要証明書と概要記録事項証明書は誰でも請求できる、登記事項証明書は当事者・債務者その他の利害関係を有する者のみが請求できると案内しています(2026年9月2日確認)。概要記録事項証明書は商業登記所・不動産登記所で取り扱われ、オンライン請求と書面請求のいずれもできる、とされています。手数料の金額は同ページには記載なしです。

この仕組みは、借り手にとって次の2つの意味を持ちます。

  1. 自社の登記の有無を、契約前に自分で確認できる(すでに他の貸し手に対して債権譲渡登記が入っていないか)
  2. 登記が入ると、第三者から見える状態になる(誰でも概要記録事項証明書を取得できるため)

法務省「(債権譲渡登記等)証明書交付請求の手続」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00181.html/同「債権譲渡登記制度の概要」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00172.html(いずれも2026年9月2日確認)

6. 経産省ガイドラインが「貸し手が借り手に説明すべき」としている項目

ABLガイドライン第2章は、次の3点を留意点として掲げています(主文の原文・2026年9月2日確認)。

  • 借り手への説明=「貸し手は、ABLを実行する借り手に対して、その融資条件や譲渡担保契約の内容等、ABLに関する十分な事前説明を行う。」
  • 過剰な担保取得の回避=「貸し手は、ABLの実行に際し、債権保全に必要な限度を超えて、過剰な担保取得とならないよう配慮する。」
  • 手数料等に関する留意点=「貸し手は、ABLの実行に際して借り手が負担するコストにつき、みなし利息に該当する可能性があることに留意する。」

同ガイドラインの「説明」部分は、事前説明に含まれる具体的な内容として、次を挙げています。

  • 融資条件について=担保内容/担保の評価(評価会社採用の有無を含む)/モニタリングの内容/評価・モニタリングにかかる手数料発生の有無と借り手の協力の必要性/一定の融資(変動)枠の設定/一定の条件の下での代表者個人保証の免除
  • 譲渡担保契約について=動産担保・債権担保の概念/動産・債権譲渡登記をはじめとする対抗要件の手法/個別の契約条項/登記に係る諸費用の負担

また同ガイドラインは、動産・債権譲渡担保権について、抵当権のような後順位の担保設定の効力等が明らかとはいえないとしたうえで、既に複数の貸し手と取引がある借り手に対しては「当該ABL案件が他の貸し手からの資金調達に影響を与え得ることを、借り手に説明することも考えられる」と記載しています。この点は、追加の借入れを予定している事業者にとって重要です。

手数料についての記載は、実質年率の考え方と直結します。ガイドラインは「融資に関連した手数料等が利息の一部とみなされれば、当該手数料等を含めて、利息制限法や出資法の観点で問題となる可能性がある」としています(→実質年率とは借入金利の法律上の上限まとめ)。

7. 借りる前に確認する項目(まとめ)

確かめること当て先(一次情報)
その契約は「貸付け」か「債権の売買」か。契約書の表題ではなく、買戻し義務・売主の支払義務の有無で見る金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」/貸金業法第2条第1項
貸し手が貸金業者なら、登録が実在するか金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」/貸金業法第3条・第11条
手数料を含めた実質的な負担が、利息制限法の上限の内側か利息制限法第1条・第3条/ABLガイドライン第2章3
自社に既に動産譲渡登記・債権譲渡登記が入っていないか特例法第13条(概要記録事項証明書=誰でも請求可)
契約前に交付される書面に、担保・手数料・登記費用の負担が書かれているか貸金業法第16条の2・第17条/ABLガイドライン第2章1
いずれも、契約前に自分で確認できる項目(2026年9月2日確認)。

貸し手が貸金業者である場合の確認手順は貸金業者の登録を確認する手順、登録番号のカッコ内の数字の読み方は登録番号(1)(2)の意味にまとめています。契約前・契約時に交付される書面の記載事項は貸付契約の書面は「契約前」と「契約時」の2回もらえる、返済額の試算は返済シミュレーター、登録番号の読み解きは登録番号チェッカーが使えます。公的融資と民間ローンの制度上の違いは日本政策金融公庫の融資とビジネスローンの違い、必要書類の公表一覧は事業資金の借入れに必要な書類一覧にあります。

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よくある質問

ABLとファクタリングは、どちらが有利ですか?

有利・不利を比較した公的な資料は、実査した一次情報には記載なしです。確認できるのは法的な性質の違い(ABL=貸付け/ファクタリング=金融庁の説明では債権の売買)と、それぞれに適用される規制の違いまでです。当サイトでは、公的データに存在しない比較や推奨は行いません。

個人事業主でも動産・債権譲渡登記は使えますか?

特例法第1条は「この法律は、法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関し民法の特例等を定めるものとする」と定めており、第3条・第4条もいずれも「法人が」と規定しています(2026年9月2日確認)。したがって、この登記制度の対象は法人です。法人以外の場合の対抗要件については、民法第467条の通知・承諾の方法によることになります。なお、個人事業主が事業資金を借りる場合の総量規制の扱いは個人事業主の借入れと総量規制にまとめています。

売掛先に知られずにABLを利用できますか?

特例法第4条第1項は、債権譲渡登記によって「当該債権の債務者以外の第三者については」確定日付ある通知があったものとみなす、と定めています。債務者本人に対しては、同条第2項により登記事項証明書を交付した通知または債務者の承諾が必要です。つまり条文上は、登記だけでは債務者に対する対抗要件は備わりません。実際の運用で通知を行うかどうかは個別の契約によるため、契約前に交付される書面で確認してください。

ABLの金利に上限はありますか?

貸し手が貸金業者である場合、貸付けである以上、利息制限法・出資法の上限が適用されます。ABLガイドラインも、融資に関連した手数料等が利息の一部とみなされれば「当該手数料等を含めて、利息制限法や出資法の観点で問題となる可能性がある」と記載しています(2026年9月2日確認)。具体的な上限の数値は借入金利の法律上の上限まとめ、手数料込みで計算される年率表示の読み方は実質年率とはを参照してください。

この記事で扱っていないことは何ですか?

個別の業者の審査に関する情報、通過率、業者間の順位づけは扱いません。公的データに存在しないためです。担保物件の評価額の算定方法も、ABLガイドラインは貸し手が適切に評価を行い、必要に応じて外部へ委託すると記載するにとどまり、具体的な算定式の記載なしです。

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最終更新:2026年9月2日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・経済産業省・金融庁・法務省)のみを根拠に作成しています。確認できなかった項目は「記載なし」と明記し、推測で補っていません。本記事は法律上の助言ではなく、また特定の金融商品を推奨するものではありません。個別の契約が貸付けと債権の売買のどちらに当たるかは契約内容と実態によって判断されるため、判断に迷う場合は弁護士等の専門家にご相談ください。