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法人で事業資金を借りようとすると、代表者個人が保証人になることを求められる場面があります。この「経営者保証」については「経営者保証に関するガイドライン」という文書が公表されており、金融庁の監督指針にも参照先として組み込まれています。
ただしこの文書は法律ではありません。ガイドライン本文が自ら「法的拘束力はない」と書いています。では何が書かれていて、借りる側は申込みの前に何を確かめられるのか。ガイドラインの原本PDF(一般社団法人全国銀行協会が公表)、金融庁の公表資料、e-Gov法令検索の条文だけを根拠に整理します。個別の金融機関がどう対応するかには触れません。
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1. 誰が、いつ作った文書なのか
「経営者保証に関するガイドライン」は、平成25年12月に経営者保証に関するガイドライン研究会の名で策定された文書です(原本PDF表紙の記載・2026年9月29日確認)。原本の「はじめに」によれば、平成25年1月に中小企業庁と金融庁が共同で「中小企業における個人保証等の在り方研究会」を設置し、同年8月に、行政当局の関与の下、日本商工会議所と全国銀行協会が共同でガイドライン研究会を設置した、という経緯です。原本はこの文書を「中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自律的な準則として、策定・公表するものである」と位置づけています。公表の事実は金融庁の報道発表「『経営者保証に関するガイドライン』の公表について」(平成25年12月9日)でも確認でき、研究会が12月5日に公表したと記載されています(2026年9月29日確認)。
第2項(経営者保証の準則)(1)の文言は次のとおりです(原本・2026年9月29日確認)。
…中小企業団体及び金融機関団体の関係者が中立公平な学識経験者、専門家等と共に協議を重ねて策定したものであって、法的拘束力はないものの、主たる債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている。
適用時期は第8項(1)に「平成26年2月1日から適用することとする」とあり、同項(3)は遡及的に適用されないことを明記しています。したがって「ガイドラインにこう書いてあるから金融機関はこうしなければならない」という読み方はできません。一方で、後述のとおり金融庁の監督指針がガイドラインを参照する形で改正されています。
経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月)表紙・はじめに・第2項・第8項 https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf(掲載元=一般社団法人全国銀行協会「経営者保証ガイドライン」 https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/)/金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』の公表について」(平成25年12月9日) https://www.fsa.go.jp/news/25/ginkou/20131209-1.html(いずれも2026年9月29日確認)
2. 適用対象になり得る保証契約の4つの要件
第3項は「以下の全ての要件を充足する保証契約に関して適用されるものとする」として、4つを挙げています(原本・2026年9月29日確認)。
| 要件 | 原本に書かれている内容 |
|---|---|
| (1) | 保証契約の主たる債務者が中小企業であること |
| (2) | 保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること(ただし書あり・下記) |
| (3) | 双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していること |
| (4) | 双方が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと |
(2)のただし書は、「特別の事情がある場合又はこれに準じる場合」として、実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者の配偶者(当該経営者と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が保証人となる場合と、経営者の健康上の理由のため事業承継予定者が保証人となる場合を、適用対象に含めています。
「対象債権者」は、第1項で「中小企業に対する金融債権を有する金融機関等であって、現に経営者に対して保証債権を有するもの、あるいは、将来これを有する可能性のあるもの」と定義されています。特定の業態に限る旨の記載は原本にありません。貸金業者が提供する事業者向けローンの位置づけはビジネスローンとはで根拠法から整理しています。
同ガイドライン 第1項・第3項 https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf(2026年9月29日確認)
3. 「経営者保証に依存しない融資」の項に書かれていること
第4項(1)は、「主たる債務者が経営者保証を提供することなしに資金調達することを希望する場合には、まずは、以下のような経営状況であることが求められる」として、3つを挙げます(2026年9月29日確認)。
- ① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離=業務・経理・資産所有等に関し両者を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付等)を社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備するなど、法人個人の一体性の解消に努める(外部専門家=公認会計士、税理士等による検証と開示が望ましい、とされています)。
- ② 財務基盤の強化=財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化する。
- ③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保=資産負債の状況(経営者のものを含む。)、事業計画や業績見通し及びその進捗状況等について正確かつ丁寧に開示・説明し、開示後に変動が生じた場合には自発的に報告する。
第4項(2)は貸す側の対応です。対象債権者は「停止条件又は解除条件付保証契約、ABL、金利の一定の上乗せ等の経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実を図ることとする」と書かれ、脚注で停止条件付保証契約を「主たる債務者が特約条項(コベナンツ)に抵触しない限り保証債務の効力が発生しない保証契約」、解除条件付保証契約を「特約条項を充足する場合は保証債務が効力を失う保証契約」と定義しています。ABLの内容はABL(売掛債権・動産担保融資)を借りる前に確認することで別に扱っています。
そのうえで同項は、次のイ)〜ホ)が将来に亘って充足すると見込まれるときは、経営状況・資金使途・回収可能性等を総合的に判断する中で、経営者保証を求めない可能性や代替的な融資手法を活用する可能性について検討する、としています。
- イ)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
- ロ)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
- ハ)法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
- ニ)法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
- ホ)経営者等から十分な物的担保の提供がある。
原本の書き方は「検討する」であって、結論を定めるものではありません。イ)〜ホ)のうち何項目を満たせばどうなるかという基準も記載なしです。
ガイドラインへの対応として制度を公表している例もあります。日本政策金融公庫(国民生活事業)の経営者保証免除特例制度は、制度ページに「『経営者保証に関するガイドライン』に対応する制度として、経営者の保証を不要とする融資を希望される方に対し…お取り扱いしています」と記載され、担保・保証人の欄は「ご融資にあたり、経営者の保証が免除されます」、利率の欄は「各種融資制度に定める利率(上乗せ利率はありません。)」となっています。利用できる方として7つの要件が列挙され、「一部ご利用いただけない融資制度があります」とも明記されています(2026年9月29日確認)。
同ガイドライン 第4項(1)(2)および脚注6・7 https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf/日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/keitoku.html(いずれも2026年9月29日確認)
4. 保証契約を結ぶときに説明することとされている3点
第5項(1)は、経営者と保証契約を締結する場合に対象債権者が主たる債務者と保証人に対して「丁寧かつ具体的に説明すること」とする事項を、次の3つとしています(原本・2026年9月29日確認)。
- イ)保証契約の必要性
- ロ)原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること
- ハ)経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の見直しの可能性があること
第5項(2)は「形式的に保証金額を融資額と同額とはせず、保証人の資産及び収入の状況、融資額、主たる債務者の信用状況、物的担保等の設定状況、主たる債務者及び保証人の適時適切な情報開示姿勢等を総合的に勘案して設定する」としています。
監督指針の改正で、説明の「記録」が着眼点に入った
ここはガイドライン本文とは別の資料で確認できます。金融庁は令和4年12月23日、経済産業省・財務省と連携した「経営者保証改革プログラム」の策定を公表しました。同日、監督指針の一部改正も公表され、改正後の監督指針は令和5年4月1日から適用予定と記載されています(2026年9月29日確認)。
「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」新旧対照表(金融庁公表PDF)のⅡ-3-2-1-2(主な着眼点)「契約時点等における説明」には、改正後の文言として次が置かれています。
二.経営者等との間で保証契約を締結する場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、以下の点について、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行うこととしているか、また、保証人に対し、下記に掲げる事項を踏まえた説明をした旨を確認し、その結果等を書面又は電子的方法で記録することとしているか(Ⅱ-10-2参照)。
a.どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容(注)
b.どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、個別具体の内容(注)
c.原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること
(注)は「『経営者保証に関するガイドライン』第4項(2)に掲げられている要素を参照の上、債務者の状況に応じた内容を説明。その際、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい」としています。第4項(2)=本記事3節のイ)〜ホ)です。
改正前の同じ箇所は「a.保証契約の必要性」から始まる3項目で、a・bのような「個別具体の内容」の説明と「書面又は電子的方法で記録」の文言は置かれていませんでした(新旧対照表の「現行」欄で確認)。監督指針は借りる側に権利を与える条文ではありませんが、「なぜ今回は保証が必要なのか」「どう改善すれば見直しの可能性が高まるのか」を個別具体的に説明する態勢が監督上の着眼点として明記されていることは、公表資料から確認できます。
金融庁「『経営者保証改革プログラム』の策定について」(令和4年12月23日) https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/20221223-3.html/同「『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(令和4年12月23日)と、同ページに掲載されている「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針(新旧対照表)」PDF https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-4/20221223-4.html(いずれも2026年9月29日確認)
5. 民法が定める保証のルールとの関係
ガイドラインは法令ではありませんが、保証契約そのものには民法が適用されます(e-Gov法令検索・原文・2026年9月29日確認)。
| 条文 | 原文の内容 |
|---|---|
| 第446条第2項 | 「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」(第3項=電磁的記録による場合は書面によるものとみなす) |
| 第465条の6第1項 | 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約等は、締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない |
| 第465条の9 | 前三条の規定は、保証人になろうとする者が法人の理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者、総株主の議決権の過半数を有する者等である保証契約については適用しない |
| 第465条の10第1項 | 主たる債務者は、事業のために負担する債務の保証を委託するときは、委託を受ける者に対し、①財産及び収支の状況、②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、③主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容に関する情報を提供しなければならない |
ここは実務上の分かれ目になります。第465条の6の公正証書は、第465条の9によって「法人の理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」等には適用されません。代表者本人が自社の借入れを保証する場合、条文上は公正証書の手続を経ずに保証契約が成立し得る、ということです。個人保証の側からの整理は保証人になる前に確認することにまとめています。
なお第465条の10第1項の情報提供義務は主たる債務者(借りる法人の側)に課されるものです。同条第2項は、情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者が誤認して保証契約の意思表示をし、かつ債権者がそれを知り又は知ることができたときは、保証人が保証契約を取り消すことができると定めています(第3項により、保証をする者が法人である場合には適用されません)。
e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)第446条・第465条の6・第465条の9・第465条の10 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月29日確認・取得した版=施行日2026年6月24日)
6. 公表されている活用実績の数字
金融庁は民間金融機関におけるガイドライン等の活用実績を集計して公表しています。最新の公表は令和8年6月26日付、対象は2025年度、集計対象は資料の注記によれば合計529機関(主要行等9行、その他銀行24行、地域銀行97行、信用金庫255金庫、信用組合144組合)です(2026年9月29日確認)。
| 項目(資料の表記) | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 新規融資件数に占める経営者保証に依存しない融資の件数の割合 | 52.9% | 55.7% |
| 新規融資件数に占める経営者保証に依存しない融資の件数と有保証融資のうち適切な説明を行い記録した融資の件数との合計の割合 | 99.5% | 99.9% |
| メイン行としてガイドラインに基づく保証債務整理を成立させた件数 | 372件 | 375件 |
この数字は件数ベースの全国集計であって、特定の事業者や特定の融資について保証なしになる見込みを示すものではありません。同資料に業種別・規模別の内訳や、申込みに対する結果の内訳は掲載されていません(記載なし)。
金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績について」(令和8年6月26日) https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20260626/20260626.html/同ページ掲載の集計表PDF https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20260626/2603.pdf/関連施策の一覧=金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」 https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/index.html(いずれも2026年9月29日確認)
7. 既存の保証と、事業承継のときの扱い
第6項(1)は、既存の保証契約の解除等の申入れがあった場合に、対象債権者は第4項(2)又は第5項に即して改めて経営者保証の必要性や適切な保証金額等について真摯かつ柔軟に検討を行うとともに、検討結果を丁寧かつ具体的に説明することとする、と書いています。同項(2)の事業承継時の対応では、前経営者が負担する保証債務について「後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、第4項(2)に即して、保証契約の必要性等について改めて検討する」こととされています(2026年9月29日確認)。
第7項は、主たる債務の整理局面における保証債務の整理の準則です。本記事は「これから借りる前」の確認を主題としているため立ち入りません。全国銀行協会の同じページには、事業承継時の特則・廃業時の基本的考え方・Q&A・課税関係のQ&Aも別PDFとして掲載されています(2026年9月29日確認)。
同ガイドライン 第6項・第7項/一般社団法人全国銀行協会「経営者保証ガイドライン」(掲載文書の一覧) https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/(2026年9月29日確認)
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よくある質問
ガイドラインに従わない金融機関は法律違反になりますか?
ガイドライン本文が第2項(1)で「法的拘束力はないものの、…自発的に尊重され遵守されることが期待されている」と明記しています。ガイドライン自体の不遵守を違法とする記載は、当サイトが確認した一次情報の範囲では記載なしです。一方で金融庁は、監督指針の「主な着眼点」にガイドラインに基づく説明と記録の態勢を置いています(令和4年12月23日公表・令和5年4月1日適用)。これは金融庁が金融機関を監督するうえでの枠組みです。
要件を満たせば経営者保証なしで借りられますか?
そのような記載は原本にありません。第4項(2)は、イ)〜ホ)の要件が将来に亘って充足すると見込まれるときに、経営状況・資金使途・回収可能性等を総合的に判断する中で「経営者保証を求めない可能性…について、主たる債務者の意向も踏まえた上で、検討する」と書いています。何項目を満たせばどうなるかという基準も記載なしです。
代表者が保証人になるとき、公正証書は必要ですか?
民法第465条の6第1項は、事業のために負担した貸金等債務の保証契約について公正証書による意思表示を効力要件としていますが、同第465条の9は、保証人になろうとする者が「主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」等であるときは前三条の規定を適用しないと定めています。条文上、代表者本人が自社の借入れを保証する場合はこの適用除外に当たり得ます。個別の契約がどの号に当たるかの判断は当サイトでは扱いません。
信用保証協会の保証付き融資でも経営者保証の話は出てきますか?
制度そのものは信用保証協会の保証付き融資とはにまとめています。全国信用保証協会連合会の「信用保証料」ページには、事業者選択型経営者保証非提供制度を利用する場合に信用保証料率が割増となる旨の記載があります。具体的な料率の数値は同ページに掲載されていません(記載なし)。
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